「あの・・・」


自分でも驚くくらい、今にも消えてしまいそうな掠れてか細い声だった。

男の人は少しだけ肩が上がり、一瞬だけ間を置いてからゆっくりとこちらを向いた。

どうやら、か細い声に驚いたのは私だけではなかったようだ


そんなことを思うよりも言葉を出さなければいけないのだか、やっぱり面と向かうとどうやって切り出したらいいか分からない。


「あの・・・

どっち方面に向かいますか」


ようやく口から出た言葉に自分で呆れそうになる。

男の人の顔を見ると、難しそうな顔をしてこちらを見ていて、その顔に思わず目を逸らしてしまった。


(この人は駄目だろうな)


自分が逆の立場だったら、こんな面倒そうな女を乗せようとは思わない。



違うトラックにしようか、しばらく歩くか・・・



家に戻るという選択肢は、もう私の頭の中から消えてなくなっていた。