「違うの」


青すぎるとも思える空を眺めながら、大きく深呼吸をした。


「由利、もしかしたら私は好きな人ができたのかもしれない。

かもしれないということだから、まだ確かなものじゃない。

そいつが私を変えてくれる、いや、私であるようにしてくれているんだ。

だから・・・」


「・・・」


「もう一度、一からやり直したいんだ

折角、そいつが私にチャンスをくれたんだから、このチャンスを活かしたい」


二人の間に冷たい風が吹いた。

私たちは冷たくなったが、それでもどこか暖かった。


「だから、違う高校に?」


「そう。

どうせなら、誰も知らないところで試したいと思って」


「親友の私に相談も無しで決めたの?」


「ごめん、由利に相談すると親身になって考え直されそうだから」


「当たり前じゃん」


二人で交互に小石を蹴りながら、駅へと近づく。



きっと、お互い歳を取って、この時間を振り返るとき、私たちは笑い合える・・・



今、この時間はそんな時間だ。