そう言って、お父さんが玄関のドアノブに手をかける。
それは家を出るサイン。
「いってくる。」
「気を付けてね。いってらっしゃい。」
少し寂しそうな顔をしたお母さんがお父さんに近づき、ゆっくりとネクタイを直す。
そして、さっきより近づいた二人はそのまま優しくキスをした。
毎朝見ているこの光景…なんて自然な流れなんだろう……。
ぎこちなくもなく、でもどこか初々しいというか……。
もう、すごいとしか思えない。
どうやったら二人みたいな夫婦になれるんだろう。
難しすぎて想像すらできないよ…。
「いいな、あんな関係…。まぁ、子供としては見てて恥ずかしいけど。」
私の横で今の光景を見ていた瞬輝が、そう小さく呟く。
一緒の事思ってたんだ…ちょっと意外だったかも。
瞬輝の事だから恥ずかしがってバカにするかと思ってたよ。
「あんな夫婦になりたいね。」
「はっ、まずは付き合ってくれる人が先だろ。見つかんのかね、姉ちゃんに。」
「なっ!!それを言ったらあんただって……」
「おーい、父さん仕事行ってくるな。そこの二人も学校遅れるなよー。」
「「!!!!!」」