「隣、座っていい?」
名前を呼ばれた事で軽く停止していた私に、隆也君が問いかける。
そういえば、今更だけど何でここに隆也君がいるのだろう。
本来ならもう消灯の時間で、トイレ以外は部屋から出てはいけないんじゃ……。
「…俺、さっきまで散歩してたんだよね。」
「へ?」
「今日は何だか寝れなくてさ、それで散歩してたんだけど途中で腕が疲れちゃって。休憩したら部屋に戻るから、少しの間だけ隣座っていい?」
「っっはい」
隆也君の言葉に、私の中の疑問が消えていく。
さっきまでは時計の秒針だけが鳴り響いていた空間に、少しずつ優しい声が混じりだす。
男の人の特徴である低い声。
だけどまだどこか幼げな感じで、お父さんの低さとはまた違う感じ。
まだ会って間もないのに、お互いの事もあまり知らないのに。
なのに、一緒にいて凄く安心するんだよね……。