勇気を振り絞って出した声は、弱弱しくも彼の耳へと届いた。
歩きだしていた足を止め、もう一度私の方へと顔が向けられた。
「どうした?」
「えと、その…名前っ聞いても、いいですか?」
手が自然と震える。
こんな気持ち初めてで。
あ、いや二回目かな。
「………南中2年。」
「え?」
「南中2年の朝日隆也。」
「南中……」
私と同じ中学…先輩、だったんだ…。
「なぁ、そっちの名前は?」
「あ、すみません。私は冨田永愛、南中1年です。」
「そっか、同じ中学の後輩だったんだな。よろしくな。」
「っっはい!!!」
ただ名前を教えて貰えただけ。
ただ名前を知って貰えただけ。
それだけなのに、こんなにもドキドキして凄く嬉しくなる。
この気持ちって………
「あ、いたっ!!姉ちゃんっこんな所で何してんだよ!!」
「ん?あ、そうだった―――っ!!!」
大事な事忘れてたっ
赤ちゃん!!!
もうすぐ私達の家族が生まれるんだった!!