なんか、めちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。
よそ見してぶつかって、自分だけしか転んでないのに先走って無駄な心配して…。
駄目だ。
自分のした行動だけど、振り返ってみたらアホすぎる。
できる事なら、今すぐこの場から走り去ってしまいたい。
「はい、これ。」
「へ…?」
瞬輝の言葉から下を向いていた私の視界に、さっき落とした鞄の姿が声と一緒に突然飛び込んできた。
「心配してくれてありがとう。荷物、ごめんな。」
「あ、いえ。こちらこそすいませんでした。」
「じゃぁ、俺行くとこあるから。気をつけてね。」
「はい。失礼します。」
男の人から鞄を受け取り、小さく頭を下げる。
男の人はその姿を見てから、慣れた手つきで松葉杖をついて私達の前から歩いていった。
「…………。」
身長、やっぱり高かったなぁ。
包帯に巻かれた足も、松葉杖を持つ手も。
視線の先に見える全てのものが大きかった。
「姉ちゃん?いかねーの?」
「あ、ごめん。今行く。」
ボーっとしていた頭を振り切り、先に歩いていた瞬輝の元へと走る。
「じいちゃんもそろそろ追いつくかな。」
「うん…たぶん……」
二人で並んで歩きながら、瞬輝にバレないよう小さく後ろを振り返ってみる。
すると、遠くの方にまだ男の人の姿が見えた。
「あの人……」
「え?」
「うんん、なんでもない。」
あの人、名前何て言うんだろう……。