もう少しの間、二人の会話を聞いていようと思ったが、急いで服を着替えてリビングのドアを開けた。
「ちょ、雄揮!!なにいって……」
「あぁ、麻椿起きたのか。おはよう。昨日は遅くまで晩酌に付き合わせて悪かったな。疲れてない?」
「っっえ、あぁ…だい、じょうぶ。」
「おはよう、お母さん。」
「お、おはよう。」
やられた、また先生にやられた。
さっきも散々からかわれたのに、またはめられるとは私もバカだな…。
私の焦った姿と落胆する姿を見て笑みを浮かべ、先生は冷蔵庫から卵を出し朝御飯を作り始めた。
もういいか、今日は私の完敗だね。
「雄揮、朝ごはん作るの代わるよ。行く準備してきて。」
「あぁ、ありがとう。」
久し振りの先生からの刺激にドキドキさせて貰えたし、今日は完敗を認めてあげる。
先生からフライ返しを受け取り、調理を始めようと卵に目をうつす。
「麻椿。」
「ん?………っっちょ」
「じゃぁ、後は頼んだ。」
やられた、去り際にまであんな刺激を残していくなんて。
卵に移した視線を動かせないまま、顔の火照りだけは増していく。
「お母さん?どうかした?」
「ん?うんん、何も!!瞬輝起こしてきてくれる?」
「はーい。」
もう怒った、今日のお弁当には唐揚げ入れてあげないっっ!!!
――――――『麻椿、名前は二人だけの時に呼んで欲しいな。』