「亜由美!」


亜由美は顔を上げ、俺の方を見た。


「悪い、待った?」


亜由美は慌てて、頭を左右に振る。


可愛い…。
俺を待っててくれたと思うと、胸の奥がキュッとする。


抱きしめたいのをぐっと我慢して、亜由美の手を取り、駅へと歩き出した。



「亜由美、土曜日空いてる?」


「土曜日?…何もないと思うけど?」


俺の問い掛けに首を傾げる。



「じゃあ、空けといて、迎えに行く。」


亜由美は不思議そうに俺を見上げている。

「デートしよ。」



あ─楽しみだ…。


まだ、亜由美は俺の名前を呼んでくれない…。

デートして、名前を呼んでもらって…考えていると嬉しくて自然と口角が上がる。


「で、でーと…。」


目をキョロキョロさせ、頬を染め恥ずかしそうに唇を噛んでいる。


これは喜んでいるんだよ…な?