亜由美と別れ、海皇へと歩く。


「俺、桜華に行ったの初めてだよ~。可愛い子たくさんいたね~。」


岳は両手を頭の後ろで組み、嬉しそうにニヤニヤしている。


「亜由美は駄目だぞ…。」

「…和哉。」


憐れみの目で見つめられた。


岳はほっといて、さっきから黙り込む啓志を見る。


「啓志?どうした?」

啓志は何か考え込むように難しい顔で歩いていた。


「啓志?」

もう一度声をかけるとようやく気づいた。


「あ─、あの女、どっかで見たんだよなぁ…。」


あの女…亜由美に声をかけてた背の高い女の事か…。


「美人だったよね~。啓志、好みなの?」


美人、確かに…。けど、何も感じない。


俺を見る目は、敵意がこもっていた…。

本能があの女は敵だと訴えている。


「う~ん、思い出せない…。」


唸る啓志。


「思い出したら教えてくれ…。」


言いようのない不安を押し込め、海皇の校門をくぐる。


すぐに岳と啓志の取り巻きの女達が周りに集まってきた。


愛想よく相手をする2人を置いて、校舎へと入った。