すがりつく真菜をゆっくりと引き離した。


「ごめん…。」


「ねぇ! 返してよ!和哉を! あなたなんか!あなたなんかより! 好きなんだから!」


真菜が叫んだ方に振り返ると…亜由美が立っていた。

「亜由美っ!」


亜由美に駆け寄ろうとした俺に真菜がしがみついた。


「嫌っ!」

「離せっ!」


真菜を突き飛ばし、亜由美の手を掴もうと伸ばした腕は、亜由美に止められた。

亜由美は目を伏せ、顔を横に逸らした。

「泉堂君…、今日は帰るね…。」

「亜由美!待っ…!」

「彼女と!! ちゃんと彼女と話して…ね?」


俺を…俺を一度も見る事なく、背を向け走って行った。


「亜由美っ!」


追いかけようとした俺にまた真菜が抱きついてくる。

人ごみの中、見えなくなった亜由美の姿。


世界が崩れていく…。
俺の中で何かが引き剥がされたようで、悲鳴をあげる。