嬉々とした表情で剣を交える阿修羅王。鋭い音をたてて交わる刃、そこから伝わってくる圧倒的な強さ。

そして、自分が勝つことを信じて疑わない力強い瞳。長い間待ち続けた力──。

 
聖は必死だった。
 
一人では無理だと解っていて戦いに赴き、休ませようとしてくれた親友のため。

はっきりとした意図が掴めない者達を相手にしている仲間達のため。

そして、自分の護りたいもののために。

 
指の先から髪の毛一本一本の動きまで見逃さないよう、神経を昂らせて、阿修羅王の攻撃を防ぐ。
 
まるで静謐な水の中をゆっくりと動いているようだった。
 
今まで見えなかったものが、はっきりと見える。
 
感じなかったものが、頭からつま先まで、全てがアンテナになったかのように、ビリビリと伝わってきた。
 

 
爆発的に強くなった聖を見て、蒼馬は呆気に取られていた。
 
やがてポリポリと頭を掻き、ニヤッと笑う。

「また俺の先を行っちまうのかよ」
 
それは悔しくもあるけれど。
 
遅れは取らない。

「負けねえぜ、セイ!」
 
蒼馬も、阿修羅王に向かっていく。
 
聖に負けてはいられない──。その想いが、リミッターを外した。