「そうよ!」
 
蓮の後ろから紅葉も飛び出す。

「うちの弟分苛めたら、承知しないわよ!」

「い、苛めるって……」
 
せっかく護ろうと思い、遠くに飛ばしたはずの女の子2人に庇われ、何となく恥ずかしい蓮であった。




聖と入れ代わりに阿修羅王と戦闘を始めた蒼馬であったが、とてもそのスピードにはついていけなかった。

「よく、こんなのを一人でっ……」
 
何とか剣を交わし、呟く。


『お前は勘だけで動くからいけないのだ』

 
つい昨日言われたばかりの真吏の台詞を思い出す。

「でも、考えてる余裕なんて、ねえよっ!」
 
繰り出される剣を、自身の剣で何とか受け止める。

「まったく、夜叉王ったら何やってんだい……こんな邪魔者をよこして」
 
聖との決闘を邪魔された阿修羅王は、面白くなさそうに嘆息し、力で蒼馬を押し切った。蒼馬は後方に勢い良く転がっていく。

「くそっ」
 
思うように動かない体に苛立つ。
 
まったく勝てる気がしない。どうやったらこの動きについていけるというのか。

 
でも、聖は阿修羅王と一人でやり合っていた。

 
勉強もスポーツも、いつでも自分の上を行っていた親友。
 
妬む気持ちがまったくなかった、と言ったら嘘になる。
 
けれど、蒼馬は知っていた。
 
人より上を行く聖は、やはり人の何倍も努力していたことを。