「蒼馬!」
 
重かった足が徐々に軽くなってきている。一歩、一歩ゆっくりと踏み出していた足は、やがて猛スピードで地を蹴っていた。





羅刹王ジャクラから立ち上がった凄まじい“気”は、道路を削り、建物を破壊した。飛んでくる瓦礫を結界を張って防ぐ真吏と李苑。

「短気な奴だ」
 
真吏は呆れてそう言った。

「そ、そんなことを言っている場合では……」
 
後ろの方で李苑が突っ込みを入れる。

「李苑、もう少し下がれ。巻き込まれる」

「いえ、私も一緒に戦います」

「馬鹿者。癒し手が怪我をしてどうする。いざという時に動けなくては私が困る」

「……そう、ですね」
 
真吏の言葉に李苑は考え直し、少し後ろに下がった。言葉がストレートなのでキツく聞こえてしまうが、いつも彼は正しい事を言う。それも他人を思いやってのことだと理解していた。
 
 
怒りに任せて“気”を放出したジャクラは、ゆっくりとした動きで細い剣を構えた。

「増長天……いくぞ」

「来い」
 
真吏も構える。