「え、ちょ、何コレ固っ…!!」
いつも以上にすごく固い蛇口。
花瓶も置いて、両手で力いっぱい回してみるが、
蛇口は一向に動く気配がない。
「どーしよ…。 てか何で回んないの〜…?」
蛇口を回すのを一旦やめ、その場に立ち尽くしていると、
「どーしたん?」
背後から急に声がして、
私は驚き振り返った。
「えっ!?」
そこには、私と同い年か、1つ上くらいの男の人が立っていた。
黒髪の、襟足くらいまで伸びた髪。
モノクロのボーダーTシャツにジーパン。
全体的にモノトーンなその人は、このお墓では初めて見る顔だ。
「あ、や、なんか、蛇口が回んなくて……」
私は少し口ごもりながら言った。
「え、回らへんの?」
そう言うとその人は、「ちょぉ、ごめんな」と言って私の前に出てきて、
右手で勢いよく蛇口をひねった。
ジャー……
その人が蛇口をひねった瞬間、
私があれだけ苦戦していた蛇口はすんなりと回り、さも当たり前のように水が出てきた。