「聞いてあげるから、いちご洗って」
お母さんは鼻歌を歌いながら冷蔵庫を開けた。
そして、念入りにいちごを洗いながらまた話してくれた。
お父さんと初めて会った日のこと。
素敵な人だなって思ったけど、なかなか近づけなかったこと。
出会ってから半年ほど経った頃、やっと話ができた。
そして、お母さんから告白したんだって。
昔の人って言うと失礼かもしれないけど、メールも携帯もない時代なのに、よく頑張ったよね。
片思いだったんだよ、お母さん。
生意気にも、お父さんはお母さんを振ったんだから。
当時はイケメンだったらしいお父さんは、周りに女性がたくさんいた。
お母さんは、ライバルがたくさんいるのに、彼女の地位を勝ち取ったのだ。
しかも、1年かけて。
ゆっくりと、お父さんに近づいた。