―念願のデート―
会いたくて、顔が見たくて、触れたくて、キスがしたくて……仕方がなかった。
久しぶりの王子とのデートの朝。
興奮しすぎて、階段で足を踏み外す。
「大丈夫?陽菜」
「お母さん、痛いよ~」
「変な歌歌ってるからよ。王子と会えるからって興奮してるんでしょ?」
お母さんは、王子との恋をめちゃめちゃ応援してくれている。
まだちゃんと挨拶に来てくれたわけじゃないけど、何度か顔を合わせている。
「王子に会えるの嬉しいんだもん」
「いいわね~、青春だわ。お母さんも昔はそうだったなぁ。お父さんたらね……」
あ~、また始まった。
お母さんの昔の恋物語!
「ストップストップ!!それ、もう10回も聞いたから!」
「陽菜、聞いてくれてもいいでしょ?」
お母さんは、私に彼氏ができてから、少女に戻ったようだった。
今までは恋愛の話なんてしたことなかったのに、今では過去の恋愛やお父さんとの恋愛を話してくれる。
それがまた長いし、細かいんだけどね。
お母さんとお父さんが恋に落ちたから、私って人間が存在しているわけで。
そう思うと、お父さんとお母さんの恋愛は私にとっても大事なんだけどさ。