「よぉ~!!陽菜」




仕事を終えた王子が駆け足でやってきた。





「ちょっとまだ仕事残ってるから、後で戻らないといけないんだよ」





腕まくりした王子の姿にキュンとしつつ。




「今日はね、ユッキーもいるんだぁ」





少し離れた場所に座っているユッキーを指差した。




「は?何?それ」




あからさまに、眉間にしわを寄せた王子。






「黙っててごめん。今日はお願いがあるのです」





快く、OKしてくれるのかな?



王子の反応が想像できなかった。



でも、最初で最後のキス、だから・・・・・・







「ユッキーに1回だけキスしてくれない?」






震える声でそう言った。




風が私達の間をすり抜けていく。






「俺のこと、好きじゃねぇの?陽菜って」





冷めた口調でそう言った王子は、目を合わせてはくれなかった。