ハッと気づくと
殿はもうお稽古を
終えるところだった。








やっ、やばいっ!

こっちに来る!!









今さら逃げ出すことも出来ず
必死に息を殺す。





少しすると殿たちの
話し声が聞こえた。










「若様。
最近調子が
悪いようですが」

「そうですな。
何か気にかかることでも?」

「うむ…そうだな。
びたみんが足りないの
かもしれない」

「びたみん??」

「そうだ。
ああ…
とまとが食べたいな…」
















殿…。





身分も違う。

生きる時代も
本当なら違う。

お殿様の事情も
この時代のことも
何もわからないあたしにも、
出来ることがある…!













あたしは殿たちが
いなくなったのを確認し
家に走り出した。