「あら…
浴衣、無駄になったわね。
まあ、良かったわ。
幹成様のお父様に
あなたの存在がバレれば
幹成様は勘当されかねない。
あの方は一族のために
あたしのような
身分の高い人と
結ばれなければ
ならないもの。
幹成様のことを思うなら
これ以上あの方に
近づかないことね」
お姫様は最後
威嚇するように
あたしを見ると
仰々しく去っていった。
…こんなはずじゃ
なかったのに。
二人でお祭りに行って
楽しい時間を
過ごすはずだった。
それなのに…
「おい…
客、誰だったんだ?
いつまで外にいんだよ。
早くしないと殿様が迎えに
きちまうんだろ?」
「…それが殿、
用事出来ちゃった
みたいで、さ。
ドタキャンされちゃった!
あははは…」
あたしはモスケに
見えないよう
ギュッと拳を握りしめる。
するとモスケは
そのあたしの手を
もっと強く握った。
「……いくぞ!!」
「えっちょっとモスケ!?」
「いいから行くぞ!
夏祭りだよ!」
あたしの手をひき
ずんずん歩き出す。
意外と大きな手に
少しドキッとした。