…ほらね。



殿、聞いた?





あたしがどれだけ
着飾ったってあなたとは
つりあわないってさ。








それなのに浴衣とか
もらって舞い上がって…

ばかみたい。







そりゃそうだよね。



あたしは現代、
殿は戦国時代の
人間なんだから。





付き合ったりとか
ありえないじゃん。





そんなこと言われなくても
わかってるよ。

当たり前でしょ。








「そんなこと…
言われなくたって……

あたしだって、
別に殿のことなんか
好きじゃないし!」










あたしが自嘲気味に
笑いながら言った時だった。





お姫様の後ろの方に、
ここ数日ですっかり
見慣れた人間が立っている。








「………。
モエ…」

「!
殿…」

「…ごめん」

「あ、殿っ…」









殿の背中が
遠ざかっていく。





悲しい色を残して。