「おばちゃん早く!」
「待って待って。
なにせこんなちゃんとした
浴衣なんて持ってないから」
「急がないと
殿が迎えに来ちゃうよっ!」
今日は待ちに待った
夏祭りの日。
口調は焦りながらも
心は踊っている。
畑仕事を早めに済ませ、
おばちゃんに浴衣を
着るのを手伝って
もらっていると、
なにやら外が
騒がしくなった。
「あらあら何かしら…」
「おい…
萌絵…
お前に客だぞ」
そう言ってあたしを
呼びにきたモスケ自身も、
自分の見たものが
信じられないような
半信半疑な表情をしていた。
「あたしに客…?」