殿の髪が顔にあたって
くすぐったい。
あたしたちの距離は
そのくらいだった。
何で何も言わないわけ!?
も、もう心臓が
もたないっ…!
「変だ。」
「はっ…?」
「お前顔が不自然だぞ。
何かぬってるのか?」
「べっ別に化粧くらい
普通にするでしょっ!?
って!てゆーかどいてよ!
そんなこと言うために
あたしの身動き
封じないでよ!!」
「何を怒ってるんだ?」
「怒ってなんかない!!!」
「ほら怒ってる…」
殿が納得いかない顔で
やっとどいてくれる。
全く、こんな相手に
ドキドキした自分が
バカみたいだ。
「なあモエー?」
「わっ!」
急に殿が除きこんで来て
不覚にもまた胸が高鳴る。
「ほ、ほらっ!
そろそろ帰んなきゃ
お城の人に怒られるよ!」
「む…じゃあ帰るけど…」
「はいはいまた明日ね
バイバーイ!」
胸のドキドキを
悟られたくなくて
一気にいい放った
あたしだった。