「………」

「………」








お互い何も話さない。



少なくともあたしは
口を開くことが
できなかった。








顔の横にある
たくましい腕。



あたしの体をはさむ膝。



体全体が殿に
包み込まれてるような
感覚に陥る。



心臓はバクバク。



頬が熱い。









「と、殿…?」









やっとの思いで
呼びかけたが
殿はどいてくれない。



それどころか、
いつになく真剣な表情で
ゆっくり近づいてくる。





あたしはというと
まるで体全部が
心臓に支配されたように
思考が止まって
しまっていた。