車いつの間にか王麗家の敷地に入っていた。
見慣れた広大な庭が窓いっぱいに広がる。
そしてその庭を超えた先に洋館が立っている。そこがあたしの家だ。
車が階段の前で止まり、先に降りた霧島がドアを開けてくれる。
そしてそこから歩いてほんの1分。
玄関のドアが開いてお手伝いさん達が笑顔で迎えてくれる。
「おかえりなさいませ、お嬢様!」
「ただいま」
別にみんなで迎えなくてもいいのになぁっという気持ちは小学校の時から変わらない。
前にそんな事を霧島に言ったら酷く怒られてしまった。
その上、あたしは王麗グループの令嬢として認識がなさすぎるとまで。
そこまで言われる筋合いはないと思ったんだけど。
この霧島に口で勝てたことなんかなかったあたしは黙ってそれに従ってる。
「お嬢様、今日はいかがでしたか?」
「今日の夕食は..」
「あ、お嬢様..」
それでも家に仕えてくれるみんなはとてもいいひとばかりで。
お父様やお母様がいなくても寂しい思いをした事はなかった。
「ごめんなさい、今日はこれから予定があるの。終わったらみんなにお話しするわ」