教えてほしい。

 でも・・・私はためらってしまう。



「教えてほしいですけど・・・本人の了解もなく・・・きいてもいいのかな、なんて」

「いいと思うけど」



 あっさりと、佐藤くんは答えた。

 片目をつぶって、笑う。



「福田さん限定なら、ね? 今、携帯持ってる?」

「あ・・・教室の鞄の中」

「それじゃ、手」

「?」



 いわれるままに手を出すと、佐藤くんはどこからかサインペンを取り出した。

 意図に気がついて止めるまもなく、さらさらと私の手のひらに書き出した。

 くすぐったい。

 それに、なぜ、手? 教室に行けば、紙の一枚、二枚あると思うのに。

 小学生以来だ。手に文字を書くなんて。