佐藤くんは、ズボンのポケットから携帯を取り出した。

 私の目の前につきだす。
 ストラップに、小さなサッカーボールがついていて、ゆらゆらと揺れた。



「これは、おれの携帯。機種交換したばかりの、ワンセグつき。今なら、アドレス登録無料です。もれなく、おれが愛をこめて返信します」

「はい?」



 行動が読めない・・・。



「福田さんがとっても可愛いし。

 それに大盛りカツカレーにつられて、ぽろっとしゃべっちゃったりしたから、海老原に裏切り者よばわりされちゃったりしたので・・・それの、罪滅ぼしもこめて」

「?」

「福田さん、携帯持ってる?」

「持ってますけど・・・」



 高校になって、親に持たされたんだ。



「で、海老原の番号とアドレス知ってる?」

「いいえ。というか、光くんが持っているかも知らなかったです」



 私は首を振った。

 

「やっぱり。海老原も、福田さんがもっているか知らないっていってたよ。

 高校生にもなったら、普通、もってるでしょ? 必需品だよね。

 けど、海老原にメール送っても、絵文字もなしの、はい、いいえか、一行くらいしか帰ってこないんだよね。

 それでもよかったら、海老原の、教えちゃうけど? どう?」