「アーヤぁ…、魔界に放った密偵は俺たちだけじゃないってことか…?」
いらついた声を出すライアスに、イブナクは驚く。
「ここは撤収だろう。」
ドリウスが突然、傲慢の屋敷からの撤収を提案する。会話についていけてないイブナク。
「屋敷をふらふらしたんなら大量の人間の使用人を見ただろ?」
ライアスは説明するのももどかしそうだが、イブナクにしっかり説明する。
「うん。」
「アバドンにイブナクの剣を砥がせたとき、アバドンはヤケドしたよな。」
「あれはあまり趣味がよくないと思ったけど、事実だ。」
提案した本人を目の前にして、趣味がよくないと言い切るイブナク。
ライアスは、俺の邪魔をするやつぁどんな目に遭ってもいいんだよ、と思いつつも、それをわざわざ言うと会話が逸れるのでそこは飛ばして、説明を続ける。
「ここの屋敷の人間たちは、天界の武器を使わせるために飼われてるってことだ。」
「すなわち傲慢のサキマは魔界の神を目指してるな、間違いない。」
「最初から七罪の奴らなんて、6人の力を従えれば魔界の神になれる…。見落としてたな。」
ライアスは悔しげにぼそぼそとつぶやく。
「いや、今まで会った七罪があんなのばかりだから、それは気づかねぇ。」
ドリウスはライアスをかばっているのか、ドリウス自身もその考えは無かったのかは表情や言い方からはわからない。

「天界の武器なんて、悪魔でありながら天界と手を組んでいるアーヤしか手に入れられない。」
「すなわち、強欲と傲慢は協力関係にあるわけだ。」

「さて…どうすっかな、傲慢を引きずり出して喧嘩しかけるか?」
「人間の前で人間を皆殺しにするのはちょっとアレだが、人間側からしかけてくるんだったらいたしかたなし。」
ライアスとドリウスは真剣な顔をしている。
イブナクは、こんな緊迫した状況の中でも、ライアスとドリウスの真剣な顔なんて今後も見る機会は少ないだろうな、と冷静なのか呑気なのかわからないことを考えていた。