結局、30分くらいでイブナクは部屋に戻ってきた。

ライアスとドリウスは他愛ない話をしていた。

「イブナク、戻ったか。」
ライアスがイブナクの気配で気づき、だるそうに片手をあげた。おかえりのつもりなのだろう。

イブナクは違和感を覚えた。
ライアスは気配で気づくなどといったことは部屋を出る前まではできなかったような気がする。
よく見るとライアスとドリウスの容姿が少し変わった気がする。
「2人とも、なんか変わった?」
「マナの契約っていうのをやった。」
「真名の契約か。結構束縛の強い契約だって聞いてるから、あまりやる悪魔はいないらしいけど。」
ライアスよりもイブナクのほうが悪魔の事情に詳しいようだ。
「契約って何種類あるんだよ…。俺は血の契約しか知らなかったぞ。」
ライアスがだるそうにぼやく。
「悪魔なのに悪魔のことを知らないのか。」
イブナクが呆れたように言う。

「単純な悪魔同士なら血の契約と、真名の契約と、紙の契約と、魂の契約があるぞ。」
ドリウスが契約の種類を列挙する。
「紙の契約は、人間界でよく使われる。そもそも人間は魔法を使えないから書面で契約する。特に大量にお金を借りるときは。」
イブナクが詳細を説明する。
「魂の契約は?」
ライアスがイブナクに聞くが、聞かれた途端、イブナクの顔が真っ赤になる。
「ライアスの気が向いたら魂の契約してやってもいいぞ。」
「ドリウス!」
イブナクが珍しく大声をあげる。ドリウスはイブナクの様子を見てニヤニヤしている。
イブナクは、からかわれたことを悟り、黙ったが、不機嫌そうだ。

不機嫌そうな顔をしながらも、イブナクはさっき見た武器庫のことを話す。
「それより、ここは悪魔の屋敷なのに随分大量の天界の加護を受けた武器があるんだな。」
ライアスのだるそうな顔が突然、引き締まり、ドリウスのニヤニヤした顔も真顔になった。