あの人が、渡していた、台本を覗く。
そこでやっとわかった。
「俺の娘訳。」
そう言うと、皆の視線が集まった。
「マジかよ!?」
っと、勇作。
「えーーすごいじゃん!」
っと、恭平。
「え…そんなぁ…私、無理です…」
それに、戸惑う涼子。
やっと、前みたいに慣れたかな?


オーディションまで、あと2日で、涼子は、台本を完璧に、覚えた。
俺でも、びっくりするほどの、早さで、役にのめり込んでいく。
今日は、俺との絡みを練習している。
圧倒されるほどの、勢い。
すごい、感情移入で、号泣までしている。
すごい……
それしか言葉が出てこない…
絶対涼子は、受かる、そう確信した。

オーディションの日。
涼子は、凄く珍重している様で手がガタガタ震えている。
俺は、親って事で、変装して来てるんだけど、心配なのかマネージャーも、着いて来た。
「山田、涼子さん、お願いします。」
まだ山田っと、言うのになれないのか、ビクッと跳ね上がる様に席から立ち上がる。

「では、お願いします。」
涼子の、演技に審査員が、びっくりして、いた。
もちろん、マネージャーも、口を開けて見ていた。
「涼子ちゃんは、事務所に入って一週間だよね?」
審査員が聞く。
「はい。」
申し訳なさそうに、頭を下げながら言う。
涼子の、返事に会場が、どよめく。

「この、役に選ばれたのは…」
審査員から、発表が、ある。
「山田涼子さんです!」
会場から拍手が、起こる。
「私……私が?」
泣き笑いの顔で、俺に向かって。
「もう、共演できるなんてね!」
っと言ってくれた。


帰りに、別室へ、呼ばれた。
涼子と、中へ、入る。
俺は、帽子と、サングラスを、撮って頭を下げる。
「ありがとうございました!」
「か、和也くん…この子だったのか…あの、噂の子は…君が教えたのか?」
びっくりした様に審査員が、聞く。
「いいえ、何も、涼子は一人でここまで来ました。」
それに驚いたように。
「君は天才だね!これ、台本だよ、頑張ってね!」
っと、涼子の、肩を叩きながら言った。
「じゃ。撮影の日にまた!」
そういい、審査員、いや、ディレクターは、上気分で部屋を出て行った。