母からその話を聞いた時の事を想い出しながら運転しているうちに、いつの間にか実家近くへと帰って来ていた。


幼い頃、兄と一緒に自転車を走らせた公園の前を通る頃、兄から携帯に電話がかかってきた。


─無事、家に着いたか?


今でも兄にとって私は、すぐに兄とはぐれて迷子になる泣き虫のチビ助のままなのだろう。


車を実家へ返し、私は自宅への道をわざと遠回りして先程の公園の前を歩く。




前方から幼い兄妹が手をつないで歩いて来る。
駄菓子屋の帰りだろうか、二人ともつないでいない方の手に小さな袋を下げている。

小さな女の子は何やら泣きながらワガママを言っているようだ。

男の子は、困ったようなウンザリしたような顔で妹に文句を言い、それでもしっかりとつないだ手を離そうとしない。


すれ違うとき、私が幼い頃に呼ばれていた愛称が聞こえた気がした。


たぶん、追憶に浸っていた私の、都合のよい空耳だろう。