幼児の間違った聞き覚えや言い間違いは、この上なく可愛い。
なんともホノボノした場と笑いを提供してくれる。
が、大人のそれは、ヘタすればオイシイがヘタすれば常識を疑われる。
「可愛い」で済まされるには、年齢や性別、人間関係などが複雑に影響し、条件はやや厳しくなる。
気をつけたいものだ。
ある日の、我が家の食卓での事。
次男が父に問いかける。
「ちゅうちゅうべえ、ってさあ…」
─??
チューチュー兵衛?
次男の無邪気な言い間違いは、話の流れから察するに、野球の《ツーベース》の事だと3分後には判明するのだが、この際、語源はあまり関係なく、どうでも良い。
何故か私の耳から脳へ伝わる過程の何処かで
ちゅうちゅうべえ
↓
チューチュー兵衛
と変換され、股引きに脚伴、手には手甲、キモノの裾をヒョイとたくしあげ、チョンマゲ頭で唇を《チュー》の形に尖らせて、旅の娘にチューをせがむ一人の男が私の脳内に浮かんだ。
たぶん、《うっかり八兵衛》あたりからの連想だろう。