母親の苦悩をよそに着々と長男の着替えは進み、次にズボンを履きベルトをギュッと締める。

この、ズボンの丈もまた謎だ。

足首まで守るでも無く、動き易さを追及した短さでも無く、実に中途半端な丈なのだ。

いっそ、足首までの丈にしてしまえば、あのヘンな輪っか靴下は要らないではないか。

どうしても輪っか靴下を履きたいなら、いっそズボンを膝上丈にしてしまい、脛とふくらはぎの保護をブ厚い靴下と輪っか靴下に託し、その存在を全面に出してやってはどうだろう。


愚にもつかない事を考えているうちに、胸元にチームのロゴが入った半袖のユニフォームを着て、長男の着替えは完了した。



…かに見えた。


まだ気を抜いてはならない。

なんと、彼は先ほどギュッと絞めたはずのベルトを今一度はずし始めたではないか。

ズボンが足首までズリ落ちないようガニ股でストッパーをかけ、そそくさとユニフォームの裾をズボンの中へ収め、再度ベルトをギュッと絞める。
今度こそ着替えは完了したようだ。


ならば、着替え過程の、ヘンな輪っか靴下とズボンの間、もしくはアンダーシャツとハイソックスの間に、ロゴユニフォームを着れば、ベルトをギュッの作業は一度で済むのではあるまいか。



彼の行動もまた不可解だが、もしかしたら私が知らないだけで、ユニフォームを着るに当たって、この順番に何か重要な意味があるのかも知れない。



いや、きっとあるのだろう…