ふと気がつくと鏡に映る私の背後に夫の芯壱が歯ブラシを口の中に入れてすっ立っているのが映っていた。


友達との約束のために準備しているんだとでもいうように

「今日は会議だけど…
杏子とお昼約束してるし杏子に会うのも久しぶりだしなぁ…」
なんて独り言を言った後、後ろにいる芯壱にやっと気づいたフリをしてみせた。

「どっちがいいかな…?」
なんて…


「…わからない…」言うと思った。


私と芯壱は結婚して七年目になる。


といっても、結婚前からの付き合いを足せば九年ぐらいは一緒にいる。


私の二十代はほぼ芯壱に使った。