タオルを突き出して来た伊崎は、ただ人の顔を睨み付けている。

「何だよ」

「お前が拭け」

「てめぇは、ガキか!」

一向に自分で拭こうとしない。伊崎をほって向こうの部屋に行けば諦めて自分で拭くかと思ったが、こちらに来る気配もない。

伊崎のいる部屋を覗けば突っ立ったままでいる。
まさか、拭くまで動かねぇつもりか!?

ここで拭いたら負けだ。
ソファーに座り直して煙草に火を点ける。

テレビの音だけが部屋中を響かせていた。