すっかり夜になると、お父さんが裕樹君を見ると、子供のように瞳をキラキラと輝かせた。


「久しぶりだね、裕樹君。ご両親は元気か?」

「はい。おじさんも元気そうで、何よりです」

裕樹君の気持ちがいい対応に、気をよくしたお父さんは母に早速、お酒の催促(さいそく)をする。


「ありがとうな。いやぁ、ずいぶん、大きくなっちゃってなー」

お父さんはグビグビとお酒を飲む。

早くも酔いが回ったみたいで、ソファに横たわって寝てしまった。


「ごめんなさいね。迷惑かけちゃって」

「いえいえ。俺、楽しかったですから」

まるで元々、この家の息子のように、板についている。

私だけといる態度と全然違って、同じ人に見えない。


「裕樹君、そろそろ寝ていいわよ。理央は、食器を片づけるの、手伝ってくれる?」

「うん、いいよ」

「じゃあ、俺はお言葉に甘えて。おやすみなさい」

「はい、おやすみなさーい」

裕樹君が2階に向かうトコを見送った母は、私にまた気持ち悪い笑顔を見せた。

だから、やめてよね。
その笑顔……。


「裕樹君、すっかりいい男になったわね」

「え、そう?」

「だって、そうじゃない。礼儀正しいし、イケメンになっちゃって……。まるで、山下彰君が出てきたみたい」

山下彰とはアーティストのことで、お母さんはその人のファンなんだ。