「やっと抜け出せた。だからヤなんだよな、クラスって」

裕樹君はため息をついて、言う。

多分、女子に囲まれることがいやなんだろう。


「なら、変装でもしてくればいいのに」

「めんどくさいだろ、そういうの。そもそも、俺、芸能人じゃないし」

だったら、私にグチをこぼさなければいいのに、と思う。


「真悟って笹島のこと、好きだな」

「え? そうなの?」

「あぁ」

へえ、男子同士だからわかるのかな。

女子だって、女子同士にしかわからないものがあることを考えれば、当然のことなのかもしれない。


「なあ。昼休みって、何時まで?」

「13時半までだよ」

と、言うと、裕樹君はケータイで時刻を確認しているので、私も確認すると13時10分。

終了まで、あと20分もある。


「屋上って行けんの?」

「行けるけど」

「じゃあ、行こうぜ」

裕樹君はどこかウキウキしているように、顔色がよくなった。