口を開いたのは親父だった。
「椿は昔からピアノが上手くてね。さすが俺の子だって思った。」
意味わかんねぇ…
なにホラ話してんだよ。
「ただ、椿は褒めても喜んだ表情は一切しなかった。だから、椿は叱って育つ方、そうだと思って椿が自分の思いを打ち上げるまで叱り続けよう、そう考えてたんだよ」
「………」
「椿はピアノを弾いてる時、すごくいい表情をするんだよ。だけど、ある日突然ピアノを弾かなくなってしまって…それどころか姿まで消した。毎日椿の帰りを待ち続けたけど、それ以来もう帰って来なくなってしまった」
「………っ」
「そんなお前が、まだピアノの道を進んでるなんて…」