“ちょっと待って!名前教えてくれる?”

背後から聞こえる声に、足を止めて振り返る。

“・・・結城、花音。”

偽名を使おうか迷ったが、なんか悪い気がしたので結局、本名を名乗った。

“俺は、山下透。一応先輩だからな!”

その時の先輩の笑顔は、今でも覚えている。たぶん一生忘れることはないだろう。

桜の花びらの中で輝く太陽。

私は、一瞬でその太陽に心を奪われてしまった。