「格好いいねーっ。一人かな? 声かけてみよっか」

 そばにいた女子生徒たちが、はしゃいだ声を行き交わせる。

 何気なく目をやった先には、一人の男の人がいた。

 校門の脇に立って、きょろきょろと辺りをうかがっている。

 濃い灰色のズボンに、青いカッターシャツ。

 年格好から判断するに高校生みたいだが、見たことのない制服だった。

 遠方から来たのだろうか。

 遠目にもわかる整った顔立ち。智先輩ほどじゃないけれど、程よく高い身長。

 騒がれるのも無理はないなと思いながら見ていたら、不意に目が合った。

(わわっ、どうしよ。こっち見てる)

 彼は私の方に視線を向けたまま、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「……なんだ。彼女もち?」

「あ、あの子、例の。先生に媚びを売って春の優秀賞を取った」

 遠巻きに彼を見ていた女子生徒たちが、不愉快そうに眉をしかめる。

 もう慣れきった中傷だが、今の私には痛かった。

 ぎゅ、と拳を握りしめる。

「西口友絵さん?」

「え? ああ、はいッ!」

 声をかけられ、思わず縮み上がってしまった。