「ご、ごめんなさいっ」

「大丈夫? こちらこそごめんよー」

 ぶつかった相手は、私の顔を見て目を円くする。

「友絵ちゃん?」

「智先輩……」

 泣き顔を見られたことが恥ずかしくて、私は顔を背けた。

 どうしていいか分からない。

「すみません。失礼します」

 そう言って速やかに逃走しようとしたら、腕をつかまれた。

「ちょっとストップ、あれ……友絵ちゃんの絵だよね?」

「……っ。どうしてわかるんですか?」

 私の質問には答えずに、智先輩は後ろへと向き直る。

「ごめん、急用ができた。ちょっと先に行っててもらえるかな?」

「オッケー、クラスの奴らには上手く言っておくぜ」

 友人らしき男子生徒数人は、冷やかし気味に歩き去っていった。

「あの……?」

 泣き虫だねー、と言って智先輩は優しく微笑む。

「こっち。おいで」

 腕をぐいぐいと引かれて、着いたところは裏庭だった。

「ここに座って、ちょっと待ってて。動き回ったら駄目だよ、迷子になるから」

「……なりません」

 大人しく言われた通りにしていると、智先輩は缶を持って帰ってくる。

「はい、ホットミルク」