そう言い置いて、先生は部屋を出て行く。

 抗議の声をあげる隙さえなかった。

(……ひどい)

 私は夢遊病患者のように、ふらふらと廊下を歩く。

 視界がにじんで、歩くことで精一杯だった。

 私は惨めだ。

 裏切られて、心がズタズタ。痛くて痛くて仕方ない。

「……野間野先輩」

 講堂の真ん中にいたアスカ先輩に話しかける。

 アスカ先輩は数人の友達に囲まれていた。

 下級生が何人も現れてお祝いの言葉を述べている。

 だから振り返ったアスカ先輩の顔は笑顔で。

 私を見た瞬間、笑顔は跡形もなく消滅した。

「友絵ちゃん」

 後ろめたそうな表情を見て、私は確信する。

 アスカ先輩は、私の絵を盗んだ。

 私の絵を盗んで、周りからの賞賛を受けている。

 許せなかった。

「アスカ先輩、私、先輩のこと尊敬していました」

 そこで一旦言葉を区切ると、私はゆっくり言い放った。

「でもそれも今日までです」

「な、意味が分からないわ。何の話?」

 友達の手前、アスカ先輩はしらばっくれる。