これ以上の話は、通じそうにもないと思った。

 もう、何も考えたくない。

 以前、先生とアスカ先輩が深刻そうに相談していたことがあった。

 あれは、このことについて話していたのだ。

 だから私が部屋に入ってきて、二人とも気まずそうにしていた。

「実はな、西口の絵にしたいと言ったのは野間野なんだ」

「――私は、野間野先輩に憧れていましたから。タッチとか、真似て練習しましたから」

 私の絵はアスカ先輩の絵に学んでいる。

 だからどことなく似ている部分はあった。

「そうか。まあ、お前が今さら何を言っても無駄だ。あの絵は野間野アスカの絵として、今この瞬間も大勢の人に見られている」

「そんな」

「お前が声を上げたところで意味はないさ。それどころか、目立ちたがり屋の一年生が野間野の絵を自分のものだと言い張っている――と反感を買うだろうな」

(そんなのって……ひどい)

 中学生のとき、アスカ先輩の絵に一目惚れした。

 描かれた人の表情はリアルで、心の中がそのままのぞけるようだった。

 憧れていたのに。

「じゃあな。気を落とさないで、来年また頑張れよ」