「ぼうっとしてたけど、具合悪いの?」 「いや、何でもない。ただ、蒸し暑いと思ってな」 今夜は風もなく、蒸し暑い。 それはじっとしていても、じんわりと汗が滲んで来る程だった。 「確かに暑いね。倒れないでよ、美桜里ちゃん」 「藤堂、お前こそ倒れるなよ」 藤堂は女である美桜里を労って言ったつもりだったが、逆に心配されてしまった。 珍しく他人を気遣う彼女に藤堂は不覚にもときめき、頬を赤らめた。