二人が去って行った後、土方は文机に肘をついた。



「…山崎、居るか?」



「はい、此処に」



土方の声に襖が開けられ、音もなく、一人の青年が現れた。



彼は監察方の山崎烝。



監察方は副長直属の組織で、主に隠密活動をしている。



特に彼――、山崎は副長である土方から絶大な信頼を受けていた。



山崎は土方と向き合うように座る。



「川綵について何か分かったか?」



「いえ、何度か彼女について探っているのですが、何も掴めていません」



「…そうか」



「申し訳ありません、副長」



山崎は申し訳なさそうに拳を握り締めた。



そんな彼の姿に土方は小さく笑った。



彼は自分を信頼してくれているの土方の役に立とうと必死に動いている。



それは土方もよく分かっていた。



だから、責めるという事はしない。