――……。
……。
その日の放課後。
「…あーぁ、マジで呼び出しちゃってるよ」
教室からボーッと中庭を眺めていたら、山ちゃんとあの子が話しているのが見えた。
中庭の真ん中にある桜の木。
そこに寄りかかる山ちゃんは何かを楽しそうに話して、綾ちゃんも楽しそうに笑ってる。
「………」
…山ちゃん、あの子にコクったのかな?
で、上手く行ったから二人は楽しそうに笑ってる?
「……あーもう、わっかんねぇなぁー…」
綾ちゃんが何考えてんだか全っ然わかんない。
朔ちゃんと話してる時、顔真っ赤にしてたから「あぁ惚れてんだ」って思ったけど。
でも次には「桜庭先輩のことが好き」とか言って。
そして今は、山ちゃんと楽しそうに笑ってる。
…なんなんだよ。
何考えてんだよ。
…綾ちゃんにとっての「俺」って何?
「朔ちゃん」って何?
「山ちゃん」って何?
…マジで、グチャグチャだ。
「…何やってんだろうな、俺」
…遠くに見える綾ちゃんを見つめ、ポツリと言う。
もちろん俺の声は綾ちゃんのところまでは届かないけれど。
だけど…、だけどそれでも、言わずには居られなかった。
「…俺の頭ん中は、キミのコトでいっぱいだ」