「…山ちゃんちょっと…ねぇ、マジで聞く気?」
「おー」
ずんずん歩いてく山ちゃん。
歩幅が違いすぎて、どんどん離されていく…。
「あのさっ…別に、聞く必要なんてないだろっ…?」
「そっか? んじゃあ聞かなくてもいいけど。
でもあの子のところには行くよ?」
「いやっ、なんでそうなる?
聞かないなら行く必要なんて…――」
――…と、言いかけた時。
山ちゃんの歩みが急に止まり、勢いよく振り返る。
そして、ニコッと最上級の笑みを見せた。
「俺があの子に告白する」
「…は?」
「あの子に惚れちゃったんだよねー。
あんな可愛い子を放っとくお前の気が知れんわーはははっ」
……はぁ?
「…いや、“はははっ”じゃないから。
あの子に惚れた? なんだよそれ」
「だってマジだもん。
別にいいだろ?お前はあの子のことなんとも思ってないんだから」
そう言ったあと、山ちゃんはまたずんずんと歩いていってしまった。
「………」
完全に置いていかれた俺は、中学校のチャイムの音を遠くで聞きながら、ただただ立ち尽くしていた。