…忘れられない、女…。
「…違うよ。あの子は、違う」
忘れられない女ってのは…、あの子のことじゃないよ。
「俺が忘れられないのは、どっかの馬鹿に振り回されてもなお、そいつのことしか見てない女の子のことだよ」
「…それって、もしかして…」
……そうだよ、山ちゃん。
俺が言う「馬鹿」なんて、アイツしか居ないだろ?
アイツの女…俺は龍輝の女が好きなんだ。
…俺もほんとはずっと、朔ちゃんとおんなじようにあの子を見てた。
龍輝に振り回されて辛そうな顔したり、悲しそうな顔したり、泣いたり…、そういうのを知ったら、やっぱり守ってやりたくなるだろ?
いつも冗談っぽく「付き合おー」とか言ってたけど、でもほんとは全部本気だったんだよ。
俺が一番近くに居たかった。
近くで守ってやりたかった。
…でもさ、それでもあの子は龍輝が好きで、龍輝のそばを選んだんだ。
今のあの子、すげー良い顔してんじゃん。
それを壊すなんて俺には出来ない。
だから今までと同じようにみんなと一緒に笑い合う。
…ほんとは今でも好きなのに、俺はそれを隠して生きてる。
俺が忘れられない女は、真由ちゃんなんだ。