「家まで来るなっつったろ」
「大学で渡すのもなんだと思って、わざわざ持ってきてやったんだろ〜」
「そうそう、貴重なんだぜそれ?なかなか手に入らないんだからな」
「だから、俺はいいって…」
「そんなこと言うなって涼君よー。君もそんな顔してたまってんだろ?」
「ゼミの女の子の誘い、全部断りやがってこの贅沢ものが!」
「…なにバカ言ってんだよ」
階段を降りながら、玄関先で友達2人と涼との会話が聞こえてきた。
「咲」
私の姿に気付くと、3人の視線が集まる。
心なしか、涼の表情が強張った気がした。
「涼、私とりあえず一旦帰るね。
レポート終わったらまた連絡して?夜どっか食べに行こう」
そう言うと、涼の友達に軽く会釈をした。
「ちょ、誰だよ。涼のねーちゃん?」
「涼って確か年の離れた兄ちゃんがいなかったっけ?」
涼の友人2人が涼と私を見比べながら、好機の目を向ける。
「あぁ、私は….」
家がお向かいの幼馴染よ。
そう言おうとした。
涼だって自分の友達に対しては照れ臭いに決まってる。
だから気をきかせて…
「姉ちゃんなんかじゃねぇよ。
これは、俺の女」
…そう言って、私の頭にポンと手を乗せた。
一瞬、心臓が弾けるみたいにドキッとした。
相変わらず涼しい顔で、なんでそういうことをサラリと……
「まままま、マジでぇ?!涼の彼女?!」
「し、しかも年上っすか??!!」
涼の友達は、相当驚いた様子だった。
興奮した様子で、私をまじまじと見る。
「え〜年上ならお前、イロイロとリードされまくりじゃん!」
「うらやまし〜」
「良い加減にしろよ、お前ら。早く帰れよ」
涼はまた、イライラした様子で言った。
「そだね、邪魔しちゃ悪いし。
じゃ涼、また明日学校でな」
「じゃ彼女さん、涼をよろしくお願いします〜」
そう茶化しながら、涼の友達は帰っていった。