「へー。で?咲はどうしたいワケ?

聞いてるとノロケにしか聞こえないんだけど」


私の職場である、とある会社の受付。


同僚であるミカが、私の隣で呆れたように言った。



「ノロケてなんか…

これでも私、悩んでるんだからね!」


結局日曜日は、涼のレポートが終わらなくてデートは中止。

平日は私も仕事で会えることもほとんどなくて、日曜日は2人で会える貴重な時間なのに……。

涼だって、大学が忙しいのは分かるけど…

これじゃ幼なじみの時と何も変わらない。



デートらしいデートだってまともにしてないし、これって“付き合ってる”って言うの?


あんなキスまでしておいて……

“俺の女”って…何よそれ……




「つ、付き合うってもっとこう…一緒にいる時間を大切にするものでしょ?」


「仕方ないじゃない。咲も働いてるんだし、涼君だって大学の課題とかで忙しいんだから。

もっとイチャイチャしたいのは分かるけど、ヤることヤってんでしょ?」


「ちょっ、ミカ!!」


私は驚いて周りを見渡した。


「声大きいよ、もう!


私たちはまだ…その、や、ヤっては……」




私は小さくひとつ、息をつく。




「……でも、涼…その….エ、エッチな本、持ってた…」







「はぁ?!何言ってんの、そんなの当たり前でしょ?!

18の健康な男なら、エロ本のひとつやふたつ持ってない方がおかしいわよ」


「ちょ、だから声大きいってば!」



私はミカに向かって小さく怒鳴った。



涼のキスを思い出す。


涼の手が、私の胸に触れ……




…そうだよね。


涼だって年頃だもん。興味あって当然だよね。

エッチだって、本当はしたいに決まってる。


お互いすれ違いで、そんな時間がないのも事実だけど……



“俺、焦ってねぇし”


…本当は涼、ガマンしてる?

もしかして、私が“初めて”だから遠慮してるの?


それとも……


年上のクセに経験ないから、めんどくさくらなったとか…?


本当は、リードしてもらいたいって思ってんのかな…。





…私、涼の彼女だよね?


付き合ってるのに、不安になることばかり。


でも付き合うことすら初めてな私は、どうすればいいか分からないよ。

“好き”ってやっぱ苦しい…

“付き合う”って、幼なじみよりややこしいよ……