昔から、涼は本当に弟のような存在だった。
そして私は、涼の兄でもある優兄ちゃんにずっと恋をしていた。
お父さんが亡くなった頃から、優しくていつも私を気にかけてくれる優兄ちゃんが大好きで……
だけど優兄ちゃんは、私のお姉ちゃんと結婚した。
“美菜子には、僕がそばにいなきゃダメだから”
そう言って優兄ちゃんは、私ではなく、私のお姉ちゃんのそばにいることを選んだ。
……ずっと大好きだった人が、大好きなお姉ちゃんと結婚する。
私はその事実をなかなか受け入れられなかった。
15年以上私の胸に秘めていた片想いは、告げることもなくあっけなく終わりを迎え、
私は23歳にして恋愛経験ゼロ。
男の人と付き合ったことも、キスどころかそれ以上のことだってしたことない。
周りが普通に経験を積み重ていく中、それが出来ない私は人とはどこかおかしいんじゃないかって…
誰かに自分の身体も気持ちもさらけ出す勇気がない私は、
どこか変なんじゃないかって、ずっと思ってた。
“…俺、咲が好きだよ。
ずっとずっと、咲のこと好きだったよ”
そんな私の、長年塗り固めてきた分厚い壁を、
涼はなにも躊躇うこともなく飛び越えてきた。
いとも簡単に飛び越えて、私の中に入ってきた。
ずっと弟のようだと思っていた涼が、
ずっと幼なじみだった涼が、
私に好きだと言った。
抱きしめて、キスをした。
“これからは俺が、ずっと咲のそばにいる“
そんなクサいセリフを照れることなく言った。
まっすぐに、直球に、私を必要としてくれた。
私たちは幼なじみから、恋人になった。
それはちょっと照れくさくて、だけどとても甘い魔法。
涼のそばにいると、私は私じゃなくなるようで…
その先に何が待っているのか…
知りたいけど……